

東京保健の医療と研修
臨床研修制度が始まって数年が経過し、次第に研修先の選び方にも一定の形が出来つつあるように思います。それでも自分が医師として第一歩を踏み出す研修先をどこにするかはすぐには決めかねるのではないでしょうか?東京健生病院は「地域にねざし、地域医療を行っている」と案内すると非常に漠然としてしまいますのでもう少し具体的に話しましょう。
ある患者さんAさんがいるとします。脳梗塞の後遺症で寝たきり、誤嚥や褥瘡をくり返しています。この方を高齢の奥さんと日中不在の娘さんの二人で介護しています。このAさんがある日熱を出し、呼吸が苦しそうな様子となり救急車で救急病院に搬入されました。嚥下性肺炎で入院加療され禁食となり抗生剤、酸素を投与して数日で肺は改善し退院となります。さて、これでこのAさんを取り巻く問題は解決されたのでしょうか?確かに入院して肺炎は治りましたが、そもそも誤嚥した理由はなぜなのでしょうか、脳梗塞の後遺症だから仕方ないのでしょうか?奥さんの介護が悪いのでしょうか?娘さんが日中不在なのがいけないのでしょうか?私たちが見ているのは急性期と呼ばれる「肺炎で入院した期間」だけであることが多く、家でAさんがどのような生活をしているか知らないのではないでしょうか?
Aさんの「病気」は確かに見ているのですがAさんの「生活」はみえていない、しかしAさんが病気になる理由がAさんの生活の中にあるのだとすればその中に潜む問題を解決しないことには何度も同じ病気をくり返すことになります。これとどう付き合っていくかが地域医療の仕事で、私たちの毎日行っている仕事です。
決して華々しい仕事ではないと思いますが、多くの方に必要とされている事です。皆さんの進路の一つに地域医療があるのならば一度見に来ていただければと思っています。
